【大学受験】志望理由書の書き方《前半》
志望理由書って、どんなことを書けばいいんだろう?
内容が合否に関係あるってほんと?
本当ですよ。
志望理由書の大切さや書き方について,くわしく分かりやすく解説していきますね。
ここで解説する方法で書いていけば、構成のしっかりした、論理的で、入学希望が強く伝わる志望理由書を書くことができます。
目 次
はじめに
総合型選抜・学校推薦型選抜で、提出が求められる志望理由書は、当日の面接や小論文を高得点に導くために、大きな役割を果たします。
面接試験がある大学では、提出書類を基に、出願者の人物像を推しはかり、面接の質問を準備します。
つまり大学は、提出書類を参考に、より具体的に、個人的な質問を準備するのです。
優れた志望理由書を作成するためには、自分自身について深く考え、将来像をはっきりとさせる必要があります。
また、書く内容に関しての知識を身に付ける必要もあります。
ということは、志望理由書を作成する過程で、自分自身を冷静に見つめ、大学から将来への筋道を思い描くことになります。
そして、それらを説明するために、知識を身に付けます。
面接では、それらに関して尋ねられますから、志望理由書を作成している時から、面接の準備をしていることにもなるのです。
また、小論文がある大学は、提出書類と小論文から、論理的思考力や文章力、主張の一貫性を審査します。
大学が、当日の小論文自体を審査するのは当然のことですが、その小論文が、志望理由書に書かれた希望や理想と一貫性があるか、筋の通った人物であるかも審査しています。
優れた志望理由書にするためには、しっかりとした構成で、論理的で、入学希望が強く伝わるものを書く必要があります。
志望するに至った経緯、自分自身のこと、描いている将来像、これらを上手につなげて、大学側に強い希望を伝えなければなりません。
読んでくれる人の立場を考えた読みやすい構成で、説得力のある志望理由書を書ければ、それは当日の小論文でも必ず生かすことができます。
つまり、志望理由書を作成することは、小論文で必要な力を磨いていることでもあるのです。
そういうわけで、たとえ、単なる提出書類の一つであっても、志望理由書は、当日の試験に大きく関わるのです。
それでは、具体的にどうしたらいいでしょうか?
ここでは、実際に私が指導し、国立大学の看護学科に合格した生徒の志望理由書を例に、6つのステップにわけて説明をします。
ガイドに従って、書いていきましょう。
志望理由書ってそんなに大切なんですね。
ちゃんと書けるか心配になってきちゃったよ~。
心配しなくても大丈夫!
6つのステップを1つずつ進めていけば、必ず書けますよ。
前半の3ステップ
志望理由書に限らず、作文や感想文など「文章を書く」となると、書き出しをどうするか…
うーん、うーん、と悩んでしまって、1行目から進まない人、いませんか?
そういう人は、書く材料を集めて、構成をしっかり考えてから書くとうまくいきますよ。
文章を書くことが苦手な人も、ここで説明する6ステップに従って書いてみてください。
まずは、前半の3ステップです。
前半では、字数を気にする必要はありません。思い浮かんだことをどんどん箇条書きで挙げましょう。
STEP1:伝えるべきこと、伝えたいことを、を書き出す
「伝えるべきこと」は、志望理由です。箇条書きで書きましょう。
《 例 》
・きっかけは?
・その学部学科で何を学びたいのか。
・なぜその大学を選ぶのか。
・卒業後、どのような進路を希望するか。
どうでしょう。いくつか書けましたか。
私が指導した国立大学看護学科の合格者(以下Aさん)はこのように書きました。
《 Aさんの志望理由 》
① きっかけは、伯母が看護師であったこと。憧れであったこと。
② 独自の専門科目に興味がある。
③ 地域に貢献できる看護師を目指している。
※ 個人の特定を避けるため、若干の変更を加えてあります(以下同様)。
では次に、
「伝えたいこと」は、自己紹介です。箇条書きで書きましょう。
《 例 》
・自分の長所
・これまでの活動報告(クラブ活動、生徒会など)
・その他、過去の経験で伝えたいこと
(こういうことがあったから、私は〇〇に向いている、など)
こちらの方が書き出しやすいかも知れませんね。
《 Aさんの自己紹介 》
① 誰とでも上手くコミュニケーションを図ることができる。
② 小中高と9年間、バレーボールを続けてきた。
③ 特に中学、高校では文武両道を貫き、好成績を維持した。
これで、志望理由と自己紹介、共に3つずつ書き出しました。
このように、大まかに書き出してもいいですし、もっと細かく書き出して、数が多くても構いません。
また、この後のステップの途中で、追加や削除をしても構いません。
文章を書くことに慣れていない人、苦手意識がある人は、こういったひとつひとつに、
「これで全部だろうか?少ないだろうか?うーん、うーん…」
と悩みがちですが、全く気にしないでください。
後ほど、書き足すことも、減らすことも、可能です。
では次のステップに進みましょう。
STEP2:STEP1の内容を、具体的に、深く掘り下げて書く
STEP1で箇条書きした内容について、それぞれ詳しく書きます。
ここでも字数は気にせず、説明に必要なことは、全て書きましょう。
Aさんの志望理由は、
① きっかけは、伯母が看護師であったこと。憧れであったこと。
② 独自の専門科目に興味がある。
③ 地域に貢献できる看護師を目指している。
Aさんの自己紹介は、
① 誰とでも上手くコミュニケーションを図ることができる。
② 小中高と9年間、バレーボールを続けてきた。
③ 特に中学、高校では文武両道を貫き、好成績を維持した。
ですので、この6つについて、それぞれ詳しく書いていきます。
《 Aさんの志望理由 》
① きっかけは、伯母が看護師であったこと。憧れであったこと。
・伯母は総合病院の看護師で、幼いころから仕事について聞いていた。
・日常生活でも頼れる存在で、相談に乗ってもらうこともあったため、同じ職業に就きたいと思うようになった。
・医療従事者として懸命に働く姿、日常生活でも頼れる姿は、共に自分の憧れであった。
② 独自の専門科目に興味がある。
・日本では災害対策が必須であり、看護師としてそれに携わりたいと思っている。
・貴学(Aさんが志望する大学)には、専門科目として災害看護があり、大学院でも学べる環境がある。
③ 地域に貢献できる看護師を目指している。
・災害看護について深く学び、将来自分が所属する病院の地域の皆さんに、日ごろから、防災意識を高めてもらうよう働きかけたい。
・また、災害時には、地域の皆さんの力になれる医療従事者を目指したい。
《 Aさんの自己紹介 》
① 誰とでもうまくコミュニケーションを図ることができる。
・中学の時、クラスの中に周囲に溶け込めない生徒がいたが、自分とは話してくれた。担任の先生からは、同じ班になって、気にかけてあげて欲しいと頼まれた。
・同じく中学の職場体験で訪れた高齢者施設で、日ごろは周囲の呼びかけに答えない方が、自分とは笑顔で話してくれた。それを見ていた施設責任者の方が、自分の接し方を褒めてくれた。
② 小中高と9年間、バレーボールを続けてきた。
・小学校は地元のクラブチームで、中学と高校は部活で、バレーボールを続けてきた。どの環境でも練習はハードで、厳しい指導を受けたが、挫けることなく続けた。
・チーム内で意見が分かれる時は、積極的にコミュニケーションを図り、仲間を取りまとめるように努めた。
③ 特に中学、高校では文武両道を貫き、好成績を維持した。
・中学と高校は、練習だけでなく対外試合などで遠征も多く、土日を通して部活動で時間を費やすことが多かった。
・それでも、学校の勉強は怠らず、校内では上位の成績を収めるように努力をし、実現させた。
このように、それぞれについて、「これって具体的にどういうこと?」と聞かれた時に、自分が説明したいことを書いていきます。
Aさんの例では、字数が同じくらいになるようにまとめましたが、項目によって字数に差があっても構いません。
必要があれば後ほど書き足しや削除をできますし、書きにくいものは最終的には使わなければよいので、あまり気にしないようにしましょう。
大切なことは、「伝えるべきこと」「伝えたいこと」をしっかり書き出して、材料を準備することです。
どうですか?実際に文字にしようとすると、または、文字にしてみると、無自覚だった部分が引き出されませんか?
自分のことなのに、改めて、「自分ってこう思っていたのか」「自分の魅力はこれかもなぁ」などと気付くことがあると思います。
特に、「伝えたいこと」は自己紹介ですから、ここで、自分自身についてよく考え、これまでの出来事を思い出して、あなたの良さをアピールしましょう。
恥ずかしがったり、遠慮したりする必要はありません。自分で、自分の良いところをどんどん紹介してください。
ここまで読んで、じゃあ、もっと足してみよう、あれも書いてみよう、と思いついたことがあれば、STEP1 や STEP2 に戻って、書き足してください。
大体、自分が伝えられそうなことが出揃ったな、と思ったら次のステップに進みましょう。
後ほど新たに思いついたら、追加で書いても構いません。
なんだか書けそうな気がしてきました!
とりあえず思い浮かんだことをドンドン書いていきます!!
はい。ドンドン書いてくださいね。
さあ、次で、前半は終わりです。さっそく始めましょう。
STEP3:STEP2の中から、志望理由書に書く内容を選び出す
STEP2までで、大まかに書く材料が揃っていますが、思いつくままに書き出していますので、各項目のつながりがありません。
ですから、ここで、材料の中からどれを書くのか、選び出しましょう。
では、どういう基準で選べばいいでしょうか?
次に挙げる2つのポイントについて考えて選んでみましょう。
ポイント1志望理由と自己紹介に関連を持たせる
ポイント2面接で詳細を問われることを意識する
ポイント1志望理由と自己紹介に関連を持たせる
志望理由「伝えるべきこと」を実現させるために、生かせることや必要なことを、自己紹介「伝えたいこと」の中から探してください。
つまり、
a「私は〇〇を希望する」
b「そのためには、~~が大切だ(必要だ)」
c「私はこういう人物なので、実現可能だ(それを持っている)」
d「だから、貴学に入学して、希望を叶えることができる」
という、説得力のある内容にするのです。
イメージが湧きやすいように、Aさんの例で説明します。
箇条書きは、STEP2を要約してあります。
《 Aさんの志望理由と自己紹介 》
a「私は貴学に入学し看護師になることを希望する」
・日本では災害対策が必須であり、看護師としてそれに携わりたいと思っている。
・貴学には、専門科目として災害看護があり、大学院でも学べる環境がある。
・災害時には地域の皆さんの力になれる医療従事者を目指したい。
b「そのためには、コミュニケーション能力と、困難に負けず努力する力が必要だ」
c「私はこういう人物なので、それを持っている」
・小中高と9年間、バレーボールを続け、厳しい練習や指導にも挫けることはなかった。積極的にコミュニケーションを図り、仲間を取りまとめるように努めた。
・周囲に溶け込めない生徒が自分とは話してくれ、担任の先生が頼りにしてくれた。
・職場体験の高齢者施設では、利用者の方に対する自分の接し方を褒められた。
d「だから、私は貴学に入学し、希望を叶えることができる」
どうですか?
Aさんの志望理由と自己紹介が、a ~ d の中でつながっていて、説得力がありますよね。
誰が読んでも、「確かに、この人なら入学するにふさわしい」と納得する内容です。
このように、志望理由書は、大学の特徴と自分の希望、それから自分の良さにつながりを持たせるように書きましょう。
そうすると、大学側の知りたいことを全て盛り込むことができます。
大学側の知りたいこととは、
「なぜうちの大学に入りたいのか?」
「この生徒はどんな人物なのか?」
「この生徒はうちの大学で、希望を叶えられるのか?」
です。
a ~ d の流れで書けば、必ずこれらを盛り込むことができます。
すでに、志望理由書を書き始めている人の中に、志望する理由だけを列挙している人はいませんか?
それでは、「~したい、…したい」と理想を述べるだけで、あなたがそれを実現できる人物なのかをアピールできていません。
また、志望する理由を述べた段落と自己紹介の段落に関連がない人はいませんか?
こちらも、大学側への印象が薄く、あなたが「うちの大学を選んで、希望を叶えられる人物」であると伝えることができていません。
ですから、志望理由を実現させるために、生かせることや必要なことを、自己紹介の中から探して、a ~ d の流れを作り上げましょう。
ここで、志望理由と自己紹介に関連を持たせにくい、という人がいるかもしれません。そういう人は、もう一度、STEP1 → 2に戻ってください。
志望理由はある程度、決まっていると思いますので、書き直しや書き足しがあるのは、自己紹介の方かもしれませんね。
そう!自己紹介は、大学に
「この人物なら、うちの大学で希望を叶えられるな」
と思わせる内容であることが大切なのです。
STEP1で箇条書きにした、志望理由を実現させるために、大切なことや必要なことは何ですか?
それをよく考えてみましょう。
そして、あなたの中にある良さや、今までの経験と照らし合わせて、「私はそれ(実現させるために大切なことや必要なこと)を持っている」とアピールできるような自己紹介を書きましょう。
それは、幼いころからの習性や特性でもいいですし、今までの学校生活で培ったものでもいいです。
客観的に、他人が読んで、「この良さがあるなら、志望理由を実現させられるだろうな」と納得できる内容にしてみましょう。
そのために、戻る必要があれば、STEP1 → 2に戻ってください。
はぁ~
説得力のある流れをつくるって難しいですね。
そうですね。
でも、これが本番の小論文の練習にもなりますから、じっくりと考えてみましょう。
これでいいかな…という a ~ d の流れが出来上がった人は、ポイント2に進みます。
ポイント2面接で詳細を問われることを意識する
『はじめに』で述べましたが、大学側は志望理由書を基にして、面接での質問内容を準備します。
ですから、このステップで選ぶ a ~ d は、面接の質問内容に直結しているのです。
それぞれの内容について、当日は細かく、具体的に答える必要があると思ってください。
では、Aさんの例で説明します。
《 Aさんの志望理由 》
・日本では災害対策が必須であり、看護師としてそれに携わりたいと思っている。
・貴学には、専門科目として災害看護があり、大学院でも学べる環境がある。
・災害時には地域の皆さんの力になれる医療従事者を目指したい。
ここから考えられる面接の質問は、
《 面接の質問例 》
なぜ看護師を目指しているのか
災害看護とはどのような分野か、知っていることを述べてください
地域の皆さんの力になれる医療従事者とは、どういう人のことだと思うか
などです。
簡潔に述べられるように練習が必要ですし、専門用語に関しては予め勉強して知識を持っておく必要がありますね。
《 Aさんの自己紹介 》
・小中高と9年間、バレーボールを続け、厳しい練習や指導にも挫けることはなかった。積極的にコミュニケーションを図り、仲間を取りまとめるように努めた。
・周囲に溶け込めない生徒が自分とは話してくれ、担任の先生が頼りにしてくれた。
・職場体験の高齢者施設では、利用者の方に対する自分の接し方を褒められた。
ここから考えられる面接の質問は、
《 面接の質問例 》
コミュニケーションを図る上で大切なことは何か
周囲に溶け込めない人と接するときは、何か気をつけていることはあるか
高齢者施設では、どのような接し方をしたのか
などです。前半と比べると、自分自身のことなので話しやすい半面、長々と説明してしまう可能性があります。
余計なエピソードを付け足すことなく、簡潔に答えられるように準備する必要がありますね。
このように、a ~ d で選ぶ内容は、面接の質問内容に直結しています。
つまり、自分がもっと詳しくアピールしたい、答えたい、と思う内容を書けば、ほぼ確実に、面接官が質問してくれます。
逆に、これ以上深く答えることは難しい、答えることに自信がない、と思う内容に関しては、志望理由書に書かないほうがいいでしょう。
当日、質問されて、困ってしまいます。
以上 ポイント1、ポイント2を基準に、STEP2の中から、志望理由書に書く内容を選び出してください。
これで STEP3は終わりです。
「志望理由書に書いたことについて面接で質問される」と、心の準備をしておいた方がいいんですね。自信を持って答えられる内容にしようと思います!
ちなみに、次の STEP4の段階で、やっぱり書きにくいなぁ…と思えば、内容を選び直すこともできますので、深く悩み過ぎずに次に進みましょう!